
パブ初心者でも大丈夫!イギリスのパブ文化の楽しみ方と注文の仕方【エールとラガーの違いって?】
- パブ初心者でも大丈夫!イギリスのパブ文化の楽しみ方と注文の仕方【エールとラガーの違いって?】
【序章】イギリスの心臓部、「パブ」のドアを開けてみよう
こんにちは!元イギリス留学生のそわかです。「Abbeyに恋して そわかのイギリス留学情報Navi」へ、ようこそお越しくださいました。
イギリスの街を歩けば、どんなに小さな村でも、必ずと言っていいほど目にする「PUB」の木の看板。レンガ造りの趣ある建物から漏れる、温かい光と人々の楽しそうな話し声。映画やドラマで見る、あの空間に、あなたも一度は憧れを抱いたことがあるかもしれません。
でも、いざ自分が入るとなると… 「地元の常連さんばかりで、一見さんは入りにくそう…」 「カウンターでの注文の仕方が、全然わからない…」 「ビールなんて日本のものしか知らないし、お酒の種類も分からないのに大丈夫かな?」
その気持ち、すごくよく分かります!私も初めてパブに入った時は、ドキドキしながら友達の後ろに隠れるようにして、メニューをただただ見つめることしかできませんでしたから。
しかし、断言します。一度その文化とルールを知ってしまえば、パブはイギリスで最も居心地が良く、この国の文化と人々を肌で感じられる、最高の場所の一つになるんです。
この記事では、パブを単なる「お酒を飲む場所」としてではなく、**「イギリスの地域のリビングルーム」**として捉え、お酒が飲める人も、飲めない人も、誰もが安心してその魅力を120%楽しめるよう、入店から退店まで、A to Zで徹底的にナビゲートします。この記事が、あなたが自信を持ってパブの重い木のドアを開けられるようになるための一助となれば幸いです。
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【第1章】まず知っておこう!「パブ」って、そもそもどんな場所?

パブの楽しみ方を知る前に、まずはその本質を理解しましょう。
1-1. パブ = Public House
「PUB」とは、"Public House"(公共の家)の略です。その名の通り、かつては地域の人々が自宅のリビングルームの延長として集い、情報を交換し、語らい、時には温かい食事をとるための、コミュニティの中心地でした。その伝統は今も色濃く残っており、パブは単なる飲食店ではなく、イギリスの文化と社会の心臓部なのです。
1-2. バーやレストランとの違い
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バーとの違い: バーがお酒を飲むことを主目的とするのに対し、パブは食事メニュー(Pub Grubと呼ばれます)が非常に充実しており、昼間からランチ営業をしているお店も多いのが特徴です。
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レストランとの違い: 高級なレストランよりもずっとカジュアルで、予約なしで気軽に立ち寄れます。お酒一杯だけでも、食事だけでも、もちろん両方でも、自由に楽しむことができます。
1-3. 知っておくと楽しい、パブの種類
パブと一口に言っても、様々なタイプがあります。
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ザ・トラディショナル・パブ: 年季の入った木製のカウンター、冬には火が灯る暖炉、座り心地の良い年季の入ったソファ。何百年もの歴史を持つパブも珍しくなく、まるでタイムスリップしたかのような雰囲気を味わえます。
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ガストロパブ (Gastropub): 「美食」を意味する"Gastronomy"と"Pub"を組み合わせた造語。食事に非常に力を入れており、レストランに匹敵する、あるいはそれ以上のクオリティの料理が楽しめる、少しモダンでお洒落なパブです。
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チェーン店のパブ (Wetherspoonsなど): 留学生にとって、最も心強い味方となるのが、このチェーン店のパブです。特に「JD Wetherspoon」(通称:ウェザースプーンズ)は、イギリスのほぼ全ての街にあり、その圧倒的な安さと豊富なメニューで知られています。なぜ安いのかというと、BGMを流さず、テレビも最小限にするなど、徹底したコストカットを行っているから。アプリで注文から支払いまで完結するシステムも導入しており、英語でのカウンター注文に自信がない初心者にとっては、まさに天国のような場所です。
1-4. 年齢確認と「チャレンジ25」の鉄の掟
イギリスでお酒を合法的に飲めるのは18歳からです。これは絶対のルール。 しかし、それ以上に重要なのが「Challenge 25」というポリシーです。これは、「見た目が25歳以下に見える人には、年齢確認を求める」という、ほとんどのパブやスーパーで導入されている鉄の掟です。
あなたが18歳以上であっても、若く見られるアジア人の私たちは、かなりの高確率で年齢確認を求められます。その際に、日本の学生証や免許証は、身分証明書として認められません。
必ず、BRPカード(Biometric Residence Permit - 滞在許可証)か、パスポートを携帯する習慣をつけましょう。 これがないと、お酒の注文を断られるだけでなく、時間帯によっては入店すらできないこともあります。
【第2章】いざ入店!ドアを開けてから席に着くまでの、最初の一歩

さあ、いよいよパブのドアを開けます。ここからの流れは、日本の居酒屋とは全く違うので、しっかり覚えておきましょう。
2-1. 店員さんは、あなたを案内してくれない
日本の飲食店との最大の違いは、これです。入り口で待っていても、「何名様ですか?」と店員さんが席に案内してくれることは、まずありません。自分で空いている席を探して、自由に座るのが基本です。
2-2. 席探しのコツとマナー
まずは店内をぐるっと見渡し、空いているテーブルを探しましょう。
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予約席のサイン: テーブルの上に「Reserved」という札が置かれていたり、ナイフやフォークが綺麗にセッティングされていたりする場合は、食事の予約席である可能性が高いので避けましょう。
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相席の文化: 混雑しているパブでは、相席もごく一般的です。大きなテーブルの一部が空いていたら、「Is this seat taken?(この席、空いてますか?)」や「Do you mind if I sit here?(ここに座ってもいいですか?)」と、にこやかに尋ねてみましょう。
2-3. 最重要ミッション:テーブル番号を覚えよう!
席を見つけて、荷物を置いたら、まず最初にやるべきこと。 それは、テーブルに置かれている番号札(Table Number)の数字を覚えるか、スマートフォンで写真を撮ることです。
食事を注文する際に、この番号が絶対に必要になります。これを忘れると、注文カウンターで「席番号は?」と聞かれ、また席まで戻る羽目になってしまいます。
【第3章】最大の難関!カウンターでの注文パーフェクトガイド

パブ初心者が最も緊張する瞬間、それがカウンターでの注文です。でも、流れさえ分かれば、何も怖いことはありません。
3-1. ドリンクの注文は、カウンターへ行くのが英国流
日本の居酒屋のように、席で店員さんを呼んで注文する、というスタイルは、ごく一部のガストロパブを除いて、まずありません。飲み物が欲しくなったら、自分からカウンター(Bar)へ向かうのが、イギリスのパブの絶対的なルールです。
3-2.【超図解】注文から支払いまでの5ステップ
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カウンターの前に立つ: カウンターが混んでいる時は、無理に割り込まず、空いているスペースを見つけて、バーテンダーの注意を引きます。大声で「すみません!」と呼ぶのはNG。バーテンダーと目が合うのを辛抱強く待つか、お財布やカードを手に持って「注文したいです」という意思表示をするのがスマートです。
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自分の番が来る前に、注文を決めておく: バーテンダーは非常に忙しいです。自分の番が来てから「えーっと、何にしようかな…」と悩み始めるのは避けたいところ。カウンターの後ろに並んだボトルや、ズラリと並んだビールサーバーの取っ手(タップハンドル)がメニュー代わりです。事前に何を頼むか、心に決めておきましょう。
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いざ注文!使える英語フレーズ集: バーテンダーから「What can I get you?」や「Yes, please?」と声をかけられたら、あなたの番です。
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基本のフレーズ:
"A pint of Lager, please." (ラガーを1パイントください) "A half of Ale, please." (エールを半パイントください) "Can I get a glass of cider?" (サイダーを一杯いただけますか?) "A Coke, please." (コーラを一杯ください)
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銘柄を指定する場合:
"A pint of Guinness, please." (ギネスを1パイントください)
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何を頼んでいいか分からない時:
"What lagers do you have on tap?" (生ビールで、ラガーは何がありますか?) "What do you recommend?" (おすすめは何ですか?) "Could I try a little bit of that ale?" (そのエール、少しだけ試飲できますか?) ※多くのパブでは、快くテイスティングさせてくれます!
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支払い:その場で、すぐに。 注文が終わると、バーテンダーが合計金額を教えてくれます。支払いは、その場で、すぐに行います。
"By card, please." (カードでお願いします) "Cash is fine." (現金で大丈夫です) カードの場合は、カウンターに置かれたカードリーダーにタッチするだけ。現金の場合は、お釣りをしっかり確認しましょう。
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ドリンクを受け取り、自分の席へ: 支払いが終わると、バーテンダーがその場でドリンクを注いでくれます。それを受け取って、自分の席へ戻ります。これで、注文ミッションは完了です!
【第4章】何を飲む?ドリンクメニュー徹底解説【エールとラガーの違いって?】

カウンターに並ぶ、たくさんの見慣れないビールサーバー。一体何が違うのでしょうか?
4-1. ビールの基本:「エール」と「ラガー」の違い
イギリスのビールは、大きく分けてこの2種類。これを知るだけで、ビールの世界がぐっと広がります。
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ラガー (Lager):
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特徴: 日本の多くのビール(アサヒスーパードライやキリン一番搾りなど)と同じ「下面発酵」という方法で作られます。低温でじっくり発酵させるため、炭酸が強く、キリっとした喉ごしと、スッキリとした味わいが特徴。キンキンに冷やして飲むのが一般的です。
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こんな人におすすめ: 日本のビールに慣れている方、ゴクゴク飲める爽快感を求める方、パブ初心者の方。
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代表的な銘柄: Carling, Fosters, Stella Artois, Carlsberg
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エール (Ale):
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特徴: イギリスの伝統的な「上面発酵」ビール。常温に近い温度で活発に発酵させるため、炭酸は弱めで、フルーティーで豊かな香りと、複雑で深い味わいが特徴です。キンキンには冷やさず、少しぬるめの「飲み頃」の温度で提供されます。
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こんな人におすすめ: ビールの香りや味わいをじっくり楽しみたい方、イギリスならではの体験をしたい方。
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エールの主な種類:
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4-2. ビールが苦手な人への救世主「サイダー (Cider)」
日本の炭酸飲料「三ツ矢サイダー」とは全くの別物!イギリスのサイダーは、**リンゴ(または洋梨)から作られた、れっきとしたアルコール飲料(お酒)**です。 甘口(Sweet)からキリっとした辛口(Dry)まで様々な種類があり、非常に飲みやすく、特に女性に大人気。ビールが苦手な方は、ぜひ試してみてください。
4-3. お酒を飲まない人も大歓迎!ソフトドリンク
パブは、お酒を飲まない人も心から歓迎してくれます。
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定番: Coke, Diet Coke, Lemonade
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ジュース類: Orange Juice, Apple Juice
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イギリスらしいソフトドリンク:
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J2O: オレンジとパッションフルーツなど、フルーツをミックスした甘いジュース。
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Appletiser: リンゴのスパークリングジュース。
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Cordial (コーディアル): エルダーフラワーやライムなどのシロップを、水や炭酸水で割った飲み物。「Lime and soda」は定番です。
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ノンアルコールビール: 近年、非常に充実しており、味も美味しいものが増えています。
4-4. サイズの選び方:「パイント」と「ハーフパイント」
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Pint (パイント): 約568ml。イギリスでのビールの基本単位。日本の大ジョッキに近いです。
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Half Pint (ハーフパイント): パイントのちょうど半分。色々なお酒を少しずつ試してみたい時や、そんなにたくさん飲めない時には、「A half of ~, please.」と頼むのが賢い選択です。
【第5章】お腹が空いたら?絶品「パブ・グラブ」の世界

パブの魅力は、お酒だけではありません。気取らない、でも心から温まる美味しい食事、「パブ・グラブ (Pub Grub)」も大きな楽しみの一つです。
5-1. 食事の注文方法
食事の注文も、ドリンクと同じくカウンターで行います。その際、最初に席で確認したテーブル番号を伝えるのが絶対のルールです。
"Hi, I'd like to order some food for table number twelve, please." (こんにちは、12番テーブルの食事を注文したいのですが)
メニューを伝えた後、その場で支払いを済ませると、食事は店員さんが席まで運んできてくれます。
5-2. これだけは食べておきたい!定番パブ・グラブBEST5
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Fish and Chips (フィッシュ・アンド・チップス): パブの王様。外はカリカリの衣、中はフワッとした白身魚(主にタラ)のフライと、日本のものより太くてホクホクしたポテト。モルトビネガーをたっぷりかけて食べるのが英国流です。
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Sunday Roast (サンデー・ロースト): 日曜日限定の、イギリスで最も愛されている伝統的な食事。ローストビーフやチキン、ラムなどに、ヨークシャープディング(シュークリームの皮のようなもの)、ローストポテト、様々な温野菜が添えられ、肉汁から作った濃厚なグレイビーソースをかけていただきます。
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Bangers and Mash (バンガーズ・アンド・マッシュ): "Bangers" はソーセージのスラング。ジューシーなソーセージと、クリーミーなマッシュポテトの組み合わせは、まさに至福。オニオングレイビーがかかっていることが多いです。
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Shepherd's Pie / Cottage Pie (シェパーズ・パイ / コテージ・パイ): 羊のひき肉(シェパーズ)または牛のひき肉(コテージ)を煮込んだミートソースの上に、マッシュポテトをたっぷり乗せてオーブンで焼き上げた、イギリス版ドリアのような心温まる料理。
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Ploughman's Lunch (プラウマンズ・ランチ): 「農夫の昼食」という意味の、火を使わない冷たい盛り合わせプレート。チェダーチーズの塊、厚切りのパン、ピクルス、ハム、サラダなどがワンプレートになっています。ビールやサイダーとの相性は抜群です。
【第6章】知っておくと安心!パブの暗黙のルールとエチケット

6-1.「ラウンズ (Rounds)」の文化
これは、イギリス人とパブに行く際に、最も重要な文化かもしれません。 グループで飲みに行く際、一人が全員分のドリンクをまとめて注文し、次は別の人が…と、順番に奢り合うのが「ラウンズ」です。自分の番が来たら、「What's everyone having?(みんな何飲む?)」と聞いて、全員の注文を取りまとめてカウンターへ向かいます。この文化を知らないと、「いつも奢ってもらってばかりで、一度もお返しをしない人」と思われてしまう可能性があるので、注意しましょう。
6-2. チップは必要?
カウンターでドリンクや食事を注文し、その場で支払う場合は、チップは基本的に不要です。もし、とても良いサービスを受けたと感じたら、お釣りの小銭を「Keep the change.」と言って渡すのは、とてもスマートな感謝の表現です。
6-3. パブでのアクティビティ
多くのパブでは、ただ飲むだけでなく、様々な楽しみ方が用意されています。
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Pub Quiz (パブクイズ): 週に一度、特定の曜日の夜に開催されるクイズ大会。チームを組んで参加し、優勝すると賞金やビール券がもらえます。
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Darts (ダーツ) / Pool (プール=ビリヤード): 多くのパブにダーツボードやビリヤード台が置かれています。
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Live Music (ライブミュージック): 週末の夜には、地元のバンドによる生演奏が行われることも。
【終章】パブは、あなたの第二のリビングルームになる

イギリスのパブは、単なる「飲み屋」ではありません。昼下がりには、学生が一人で静かに本を読んでいたり、お年寄りのグループがお茶を飲みながら新聞を広げていたり、週末には、小さな子供を連れた家族がサンデー・ローストを楽しんでいたりする。まさに、あらゆる世代が集う「地域の広間」なのです。
そわかからの最後のアドバイス: 「最初は少し勇気がいるかもしれません。でも、一度その重い木のドアを開ければ、イギリスの日常に一歩深く踏み込める、温かい空間が待っています。まずは、平日の昼下がりの空いている時間に、カフェ代わりに立ち寄って、ソフトドリンクを一杯頼むところから始めてみてはいかがでしょうか。」
この記事が、あなたの『パブデビュー』の、心強い味方になれたなら、これ以上に嬉しいことはありません。
それでは、イギリスのどこかの素敵なパブで。Cheers!
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